危ないのは、どっちか?
NHK朝ドラの「半分、青い。」を見ています。朝ドラと言いながら、録画して夜に見ているのですが。
岐阜出身のエネルギッシュな女性、楡野鈴愛(すずめ)と幼なじみの萩尾律の物語です。
いつも自分のやりたいことに正直で、周りに迷惑をかけながらもまっすぐに生きてきた鈴愛は、東京で漫画家になるのですが、挫折し、次に映画監督を目指す男性と結婚して一女を設けながらも離婚、一旦は故郷の岐阜に帰ります。その後、フィギュアスケートをやりたいという娘のために再上京し、小さな企画会社の事務員をしながら娘をスケート教室に通わせるのですが、会社がおもちゃ事業に進出して失敗し倒産、社長は夜逃げしてしまいます。鈴愛は会社をたたむ後片付けに追われますが、その中で起業し、「お一人様メーカー」として商品を開発する事業を始めます。・・・こう書くだけでも目まぐるしい展開ですね。結局その事業はうまくいかず、仕方なく、実家の大衆食堂で作っていた五平餅を屋台で売る副業をしています。
一方、律の方は、大学でロボット工学を学び、大手電機メーカーに就職して研究者になります。会社の期待を背負って渡米し、米国の大学と共同研究をするところまでは良かったのですが、リーマンショックで会社がロボット事業から撤退、帰国して東京本社の管理部門に異動となりました。やりたい開発ができずに転職も考えていて、母校の教授に相談するのですが、不況の折り、転職もままなりません。また彼も結婚がうまくいかず、離婚しています。
そして東京の片隅で、屋台で五平餅を売る鈴愛と律が再会します。お互いの近況報告をする中で、鈴愛がこれまで開発して失敗してきた商品(おもちゃや便利グッズなど)を紹介するのを見て、律は「お前の人生、大丈夫か?」とつぶやくのです。
ふと引っかかりました。律は鈴愛を上から目線で見ているが、会社の倒産を経験し、起業して商品を開発、それも売れたり売れなかったりした経験を積み、必要なら屋台を引いて日銭も稼げる鈴愛の方が、事業家としては格段の力があるのではなかろうか。一方、律の経験は、ロボット工学では世界レベルの研究をした、ということになっていますが、それは大企業での経験でしかありません。その経験は、それを活かす組織がないとお金にはなりません。少なくとも鈴愛は、商品を開発できる、開発した商品を売るルートを持っている、在庫と資金繰りについて身をもって学んでいる、などという点において、事業の実体験があります。時々、大企業出身の技術者が起業したものの事業化できなかった、という話を聞きます。技術研究や商品開発は、事業におけるプロセスの一つにすぎません。そういう意味で、現時点で人生が危ないのは、もし会社を辞めて起業するのであれば、律の方ではないでしょうか。
まあ、この先、二人は一緒に会社を立ち上げて商品開発をするらしいので、朝ドラ的に、それはうまくいくのでしょう。