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「生きづらさ」についての一つの視点

2020-02-15

 NHKテレビで「境界知能」の特集がありました。番組のホームページによると、境界知能とは「IQ(知能指数)が平均値を下回るが知的障害には該当しない」という状態で、該当する人は「統計学上、人口の約14%、1700万人」を占めるそうです(発達障害とは別の概念です)。物覚えが悪かったり、計算が極端に苦手だったり、人付き合いが苦手といった困難を抱えながらも支援対象とは位置づけられず、職を失って貧困に陥ったり孤立し、「生きづらさ」を抱えているケースが多いそうです。

 一口にIQが低いと言っても、判定には言語能力や行動に関する能力など数種類の指標が含まれているそうで、番組で取り上げられた40代女性の例では、言語能力では平均以上の値を持ちながら、行動に関する能力(段取りをつける力など)が低く、総合的に低いIQと判定されていました。単にIQが高い/低いと言う表現では実態を正確に捉えられず、一人一人様々な状態があるようです。また境界知能は明確な知的障害とは判定されないため必要な支援も受けられず。子供の頃から「怠け者」「能力が低い」というレッテルを貼られて悔しい思いをした方が多いようです。番組に出演された方々は40代や60代という年齢で、これまで過ごしてこられた人生の辛さを思うと胸が痛みます。

 私が感じたのは、まず、人間の能力は「良い」「悪い」で二分されるのではなく、個人の数だけグラデーションがあるということです。会社においても「この社員は極端に物覚えが悪い」とか「単なる不注意のレベルを超えてミスが多い」「段取りが全くできない」というケースがあるかもしれません。でも話してみると本人は真面目で、それ故に困り、自尊心が傷つき、孤立していたりします。人の能力は種類もレベルも無数で、一人一人に向き合ってみなければ見誤ります。

 そして、これは私個人の考えですが、人は何回も生まれ変わる中で、その都度「その人生における課題」を決めて生まれてくると言う考えに共感しています(特定の宗教と言うよりは、このような解釈をするとしっくりくるという意味で)。境界知能に限らず、それぞれの障害や生きる上で生じる幾つもの問題は、「今回の人生では、この課題を抱えてかつ意味ある生き方をしよう」と生まれる前に決めてきたのだと考えます(あくまで私個人の考えですが)。そう考えると、困難を背負った人を見ると「この人、今回はずいぶん挑戦的な目標を持って生まれてきたんだな」と感じます。またそのような人と縁がある周囲の人も、その人なりの立場で学びの場に直面しているのだと考えています。

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