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「新しい天体」を教えてくれた人

2026-04-25

 今日は出身高校の同窓会に出席しました。卒業以降、40年以上の年月を経て同級生に再会し、顔と名前が一致しなかったり、一致した後はその姿の変わりように驚く(40年も経てば当たり前ですが)という経験をしました。

 当時の恩師も数名出席されました。中でも英語のK先生は、もうお歳は70歳を超えられたはずですが、お元気で我々一人一人のことをよく憶えておられました。K先生については思い出す場面があります。

 K先生は、どちらかと言えば武骨で生真面目な感じの先生でした。授業はいつも情報量が多く、大学入試の際は、試験直前まで受験対策の補習授業をしていただきました。そのK先生が、どういう流れであったか忘れましたが、ある授業でアメリカの歌手サイモン&ガーファンクルの「Sounds of Silence」の歌詞を黒板一面に書かれたことがありました。書き出した後でその和訳を細かく説明し、「僕はこの曲が大好きなんですよね」と曲への想いを長々と語られました。

 普段はそのような趣味の話題は口にされない先生が、いつになく個人的で情緒的な話を始めたのが新鮮で、それがきっかけで私もサイモン&ガーファンクルの曲を聴きだしました。「Sounds of Silence」に始まり、ヒット曲の「Bridge Over Troubled Water」や「Scarborough Fair」はもちろん、「The Boxer 」の世界観に魅かれ、「Wednesday Morning, 3AM」の影響でフォークギターを始め、「April Come She Will」は何とか弾き語りができるようになりました。その後、ポール・サイモンのソロアルバムにも手を出し、「Still Crazy After All These Years」は最も想い入れが強い曲になりました。

 サイモン&ガーファンクルは、私が物心つく頃には解散していたので、田舎の高校生で洋楽に触れる機会などなかった私は、このきっかけがないと聴くことはなかったでしょう。フランスの批評家ブリア=サヴァランが「新しい御馳走の発見は、人類の幸福にとって天体の発見以上のものである」という言葉を残しています。これに倣うと「新しい楽曲を知ることは、その人にとって新しい天体を知る以上のものである」と言えそうです。K先生には、もちろん英語の授業でかなりのご指導を受けたのは事実ですが、それ以上にサイモン&ガーファンクルの存在を教えていただいたことが私の人生にとって大きなインパクトとなりました。

 今日K先生とお会いして、「人が人に影響を与える」ということについて、しばし思いを馳せました。ただ、その話をしたところ、「そんなことあったかなあ」とご本人は忘れておいででした。でもそれでいいのです。伝えた本人には何気ない話であっても、聞いた側には人生を変えるほどの衝撃を与える場合がある(少なくともサイモン&ガーファンクルを知る人生と知らない人生とでは大きな違いがある)ことが重要なのです。こうして振り返ると、人生にはそういう仕掛けがあちこちにあるように思います。

 

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